株式会社 印刷之世界社

Insatsu Times News Paper 印刷タイムス

富士フィルムグラフィックシステムズ株式会社

週刊印刷タイムス 月刊印刷BR(ビジネスレポート) ニュースリリース検索
トップ
2006年09月30日
進藤博信社長と浅野健会長の変革対談

印刷タイムス10月3日号・全日本印刷フォーラム山口大会特集号掲載
株式会社アマナ・進藤博信社長と全印工連・浅野健会長の変革対談
印刷、写真、デザイン、広告企画、テレビCM・デジタル共有同一業界
戦うところは戦い、組むところは組む

デジタル業態変革をどのように進めるか

 印刷と写真業界、これまで隣り合わせの業種として関連性を持つことはなかった。各業界で急速に進む技術のデジタル化は、隣接線の仕切りを取り去った。印刷、デザイン、写真、広告企画、さらにはテレビCM制作業界までを同一円状に取り込んだコンテンツ作成業界が新たな枠組みになりそうな現状だ。
印刷の業態変革を指揮する全印工連・浅野健会長と、フォトコンテンツ制作業界のトップ企業である株式会社アマナの進藤博信社長の両氏が、境界線打破の切っ掛けとなった共通テーマ「デジタル変革」を軸に、このほど異色の対談を行った。「境界線のないところでのデジタル化がビジネスチャンス」とポジティブに取り組む両氏の語らいは、示唆にあふれた内容に満ちている。印刷業界でのこれまでの設備投資は、「投資ではなく減価償却を増やしただけ」とする浅野会長に、積極的なM&A展開をする進藤社長は「デジタル化の中では人への投資こそ必要」と答える。両氏の言葉の深層を、紙上採録の形でここに解き明かす。

■「隣の業種」いまは「同業種」に
印刷とは既に競合の業界関係に

 浅野 今日は、我々の印刷と同様に、デジタル化の中で業態変化を進めておられる写真業界での取り組みを、業界トップの株式会社アマナの進藤博信社長さんからお話をお伺いすることで、印刷業界の現状を外から見直す切っ掛けにしたいと思います。本当に貴重なお時間をありがとうございます。
 進藤 こちらこそデジタル化を先駆けた印刷業界から、学ばさせていただきたいと思っています。
 浅野 印刷機械メーカーであり、印刷会社をユーザーとする桜井グラフィックシステムズ(桜井GS)の桜井隆太社長から、御社のストックフォトの配信サービスを会員制で始められたとお聞きしたのですが、進藤社長からご覧になって、印刷業というのはどんなふうに映っておられたのか。同じコミュニケーション業界として、とても関連性があるし、共通点もあるように思うのですが、実際には、これまで接点があまりにもなかったと私は思うんですね。
 桜井GSさんからの企画、提案が合った時点で、印刷業種に対する思いはどのようなものであったか。そこからお伺いしたいと思います。
 進藤 私はお話を聞いた瞬間に、何の疑問もなく、これはもうやるべきだと思いました。デジタルになってしまいますと、印刷業界も写真業界もデザイン業界も広告の企画をしている業界も、それから、テレビCMの制作会社も、皆、同じ業界なんですから。その中で、みんな変わっていかなければならなくなります。
 浅野 おっしゃるとおりですね。
 進藤 浅野さんもおっしゃっているように、われわれの業界はコミュニケーション業界ですから、静止画も動画も関係なく、そのコンテンツを制作することにかかわる業態、業種はすべて同じ業界だということです。
 印刷業界は、われわれにとっては、隣の業界というよりはもう競合だという考え方に基づいて、競合に対しわれわれの商材をいかに売っていただく、ないしは使っていただくということが、重要です。競合ととらえなければいけない業界に対してどうしたらプラスの関係に転じていけるのかというところが桜井さんとの提携では、我々の検討点になったという気はします。私の考えとしては、戦うところと組むところというのが、ステージによってどんどん変わっていく、これからの時代はそういう展開になるのではないでしょうか。
 戦い方もさまざまですから、仕事の大小や内容により、同じ相手でも組むところは組む、戦うところは戦うということでいいんじゃないかと考えているものですから、今回のお話は、組むべきことだということで話を進めさせていただきました。
 浅野 進藤社長がおっしゃった、デジタルになってからいろいろなものが大きく変わって、お互いにコミュニケーション産業の中にいるじゃないかと、まさに同感ですね。
 デジタル化された文字情報も図形情報も画像情報も、今度そこに音声情報も動画の情報もデジタル化されてまいりますと、技術的に相互乗り入れが可能ということですから、そこで初めて、私ども印刷業も、今まで何をしていたのかなという業務領域の再定義に迫られるように思うんですね。印刷業界としても、まさにドメインの再定義として、今までは印刷物製造でお役に立ってきたけれども、どうもそれだけではこれからの成長性も見えにくい。そんな思いで、今「業態変革」という提案をさせていただいています。
  
■印刷のデジタル化を教訓
対応ミスの二の舞を踏まないように

進藤 われわれの業界のデジタル化は、印刷業界から始まっているわけです。グラフィックということを中心に考えると、印刷業界から始まって、デザイン業界そして写真業界へと、デジタル化が進んでいます。僕は、印刷業界もデザイン業界も、最初のデジタル化ということについて、みんなとらえ方をやや間違えていたような気がするんですね。
 写真業界を見ていると、フィルムカメラをデジタルカメラに替えて、暗室をPhotoshopに替えて、これがデジタル化だとみんな思っているんですよ。しかし、僕らが考えているデジタル化というのは、基本的にビジネスモデルを変えることだということです。
 浅野 まさにそうですね。
 進藤 そこで、よく佐川急便さんの話を出すのですね。昔は、ドライバーだったわけです。それをデジタル武装してセールスドライバーになって、さらにデジタル武装したら、今度は集金まで始めたんですね。デジタル化ということは何かというと、お客さんからはよりよいものをより早く、より安くというのが求められるわけですから、我々としては1人何役できるかというふうに合理化を図らなければいけません。アナログの時代にやっていたことをそのままデジタル化したら、会社はつぶれますよね。
 われわれはサービスの幅を広げている。それを効率的に行うためにデジタルに依存する。どの業界を見ても、アナログでやっていたことをデジタルに置き換えることを、デジタル化と言っている。これでは印刷業界、デザイン業界、広告の企画業界、出版業界、われわれの業界すべてがうまくいかなくなると思っています。
先ほどお話ししたように、すべての業界が競合する方向に向っているというのは、境界線がなくなるということです。境界線がないところが、ある人から言わせれば脅威だと言うことになりますが、このデジタル化のビジネスチャンスというか、それをポジティブに考えれば、それこそまさに最大のチャンスだということです。
 そういう意味では、たとえば、印刷業界と写真業界はもう少し距離を縮めたほうがいいと、思っているんです。
 浅野 本来、コンシューマーのために、デジタル化で何ができるのかというビジネスモデルの変革が目的でなければ、楽しくなかった。しかし、迫ってくるデジタル化の波に乗ってしまうことが取りあえずの目的になってしまったというところを、私も強く感じます。  
 これからの業態変革というのは、デジタル化されたおかげで、今までファジーなものづくりであった部分で、徹底した数値管理が可能になってきた。そうなりますと、写真業界と広告業界と同じベースで定量化した数値で意見交換ができる、あるいは評価ができるという、そこにつなげることによって品質を安定させ、コンシューマーに安心していただくことが出来る。ここに目的がなかったらもったいないなと思うんですね。
 
■リスクテイクというビジネスマインド
印刷設備は投資ではなく減価償却

 進藤 どこの業界でも、業態を変える、ビジネスモデルを変えるというのは難しいと思うのですが、僕の知っている周りを見ても、印刷業界は、人に投資をするということをあまりやりたがらない。
今の時期、ここまで世の中全体のデジタル化のインフラが進んで、携帯電話、インターネットのネットワークが世界で最も安い値段で、最も速いスピードで手に入ることになると、ビジネスモデルを変えるポイントをだれがどうやって判断するかというと、この業界にいた人にはなかなか難しいですよね。
だから、高いお金を払って、よその業界から優秀な人材を引っ張ってくる。この時期のデジタル化のための投資というのは人材じゃないかという気が、私はすごくしているのです。そうしないと、どうしても中から外を見ることになり、判断が難しい問題が出てくる。そのような問題に対して、当社を含めた写真業界では、まだまだ印刷業界の領域まで達してなくて、みんな本当に大変だ、大変だと言っているなかりの状況なのです。
 浅野 いや、そのとおりです。
 進藤 2010年までのあと4、5年の間に大変なことが起こってくるんじゃないかと、われわれは予想しています。だから、デジタルカメラに投資するのも、印刷機に投資するのもいいのですが、私は、どちらかというと、こういう時期こそ人に投資をすべきだと思ってはいます。
 浅野 私はよく「1億総印刷屋さんの時代」と申し上げますが、そういう環境の中で、より専門性を明確にしていかなければならない。デジタルという技術進化で、ある部分の専門性は薄くなりましたが、また新たな専門性が当然必要とされてきます。そういったことにいち早く注目をして、お客様から選ばれ続けるためにはどうしたらいいか。まさに投資なのですが、今までは投資という概念がなかった。今まで印刷業は随分設備投資しただろうとおっしゃるかもしれないけれど、あれは、投資じゃなくて、減価償却を増やしただけなんです。
 進藤 なるほど。
 浅野 つまり、リスクがなかった。設備を導入すれば、仕事が付いてきた。そして、利益が残った。ですから、リスクテイクするというビジネスマインドは、とても薄いですね。しかしながら、これからは環境予測をして、お客様あるいはコンシューマーのニーズ変化を仮説を立てて先回りして、どうやってお役に立とうかと考えて、その仮説に基づいて投資するわけだから、全部が全部当たるはずがない。まさに、初めてリスクを伴う、本当の意味での投資になってきました。
 さあ、どこに投資しますか。今までのように、もちろん設備も必要かもしれない。今おっしゃったように、人材もありますね、情報投資ということもあるでしょう。少なくとも、投資ということを具体的に意志決定してアクションに落としていくというのが、まさにこれからなんですね。
 そこで、もう一つ私が申し上げているのは、何もかも全部自前でやる必要はないのではないかと。競争相手をずっと競争相手にしておく必要もないし、友達になったらいいじゃないかということと同時に、すべて自前でする必要はない。御社のプロフィールを拝見しますと、グルーピングを大変積極的にされておられるでしょう。まずは、コラボレーションというレベルから、次に機能の共有、最終的には企業の統合。ここまで視野に入れている。しかも、戦略性とお客様のお役にさらに立つという志、これがあれば、企業統合は立派な手段になる。
 
■企業統合と言う志
ライフスタイルは選べるメディアを多様化する

 浅野 御社のグループ化は、どのようなお考えで進めていらっしゃったのですか。
 進藤 われわれは、創業以来二度大きな変革をしまして、今回が3番目の大きな変革なんですね。お客様が何を求めるのかというよりは、われわれのクライアントが結果的にスポンサーから何を求められるのかということを考える時代になった。スポンサーは広告代理店に対して、自社の商品が売れる仕組み、売れるコミュニケーションそのものを考えろといっている。
 広告代理店や広告の企画を考える人たちは、より考えることに集中をするし、エネルギーを使うはずなんです。企画さえできれば、あとは全部われわれができる。広告代理店は、1人頭の生産性をいかに上げるかということを考えているわけですから、結局は、人を少なくしてパフォーマンスをどうやって上げるかということに集中する。その結果として、何を捨てて何を残すのか、考えることを彼らは残すはずですね。そうするとアウトソーサーとしてのわれわれは、川上から川下までデジタル化によってワンストップでそのすべてを具現化することを要求されてくる。
 同時に、「私はこれが好きだ」、「でも、僕はこれが好きだ」と北は北海道から南は九州、沖縄まで、人々や、その多様性、ライフスタイルは多様化してきました。よく言うのですが、ビールのマーケティングで、年収二千万の人が、ビールに興味がなかったら発泡酒なんですが、年収三百万の人でも、ビールに興味があったら、プレミアムビールなんです。デジタル化のおかげでメディアも多様化し、今まではテレビ中心主義だった広告の世の中が、メディアを選べるようになっています。
 われわれのお客様である広告を企画する人たちがどうしたいかということを考えると、われわれは紙しかできません、われわれは動画しかできません、われわれは静止画しかできませんよということでは、彼らは満足しないわけです。様々なメディアに対応していかなければ。
 浅野 そうですね、おっしゃるとおりですね。
 進藤 メディアにわれわれは境をつくってはいけないということですね。だから、ソリューションという考え方が生まれてくるので、ベースがデジタルでないとさまざまに対応できません。静止画にも動画にも対応できるビジネスモデルというところで、われわれが最も得意とする、もともと国内でトップクラスだったものをさらに強化し、最大限にしておいて周辺のビジネスをくっつけていくというのが、われわれのビジネスモデルといいますか、業態変革です。
 ゴールとしては、ワンストップソリューションということになってくるのではないでしょうか。メディアとしては、クロスメディアというオールラウンドのメディアに対応できるビジュアルソリューションというものをワンストップでやりますよというのを、われわれの創業以来3回目の大きな変革の当面のゴールとしているわけです。

■五感満足・人が感動する部分
インターネットのスピードの対極にあるもの

浅野 自社のドメインを決めているのはわれわれ自身ですから、結局、その自縛からいかに解放されるか。人から言われてではなくて、自らの意志でというのが業態変革のベースで、「変化」ではなくて「変革」、「変わること」ではなくて「変えること」ですよと申し上げています。
進藤 だた、印刷という最終アウトプットを持っているというのは、コンペティターとして見たら、ものすごい脅威なんですよ。結局、そこが人との接点ですから、「五感満足」といいますか、人々の五感を通じていかに感動を与えるかという視点で考えると、印刷業界というのはものすごくいいところにいるんですね。情報を取得するのにインターネット、やネットワークと競走しても始まりません。だけど、常に五感を通じた肌触り、手触り、そういう視覚から入ってくる情報プラスアルファの部分のノイズといいますか、そこに人々が感動する部分があるわけです。
 その最終アウトプットを持っているのが印刷業界ですから、僕は印刷にこだわるということがものすごく大切だと思っています。印刷にこだわる、そこが収益性も一番高いはずだし、一番おいしくしなきゃいけないのですが、その仕事を生み出す五感満足の部分に投資をしなきゃいけないということだと思います。自分たちの一番強いところに……。
 浅野 得意技ですね。たくさん刷るということでこだわったら、やっぱり大手にはかなわないと思います。
進藤 人々がこれを見て喜んでくれる、感動するというか、デジタルって進めば進むほど、今度は逆に触れる部分が求められる。紙とのマッチングといいますか、この内容を伝えるにはこの紙、それは今デザイナーの仕事になっていますが、何で印刷会社の仕事にしないのかということが不思議です。つまり、この情報を伝えるのに、この紙じゃなくて、この紙でしょうと。デザイナーというのは当然そこまでこだわっていますからね。そこのこだわりをデザイナーから解放してあげたら、デザイナーはもっと別の仕事をやりますよ。
 浅野 時代がデジタルになればなるほど、手触り感とか風合いというもので、情報量、伝達の効率化というのは、かなり違ってきますね。
進藤 だから、僕らにとって、最終アウトプットを持っている印刷業というのは、多分同じ土俵で戦うことにやがてなるにしても、敵にしたくない、味方に付けておきたい業界です。われわれが取り扱っているのは、あくまでも制作過程のコンテンツですから、そういう意味ではどこにでもいきやすいのだけれども、実は一歩間違えると非常に弱い。最終アウトプットを持っているというのは、僕はそれだけでもアドバンテージがあると思いますが、多分そこに気が付いていらっしゃらないんじゃないかという気がします。われわれから見ると、非常にうらやましい業界だと思います。
 
■21世紀のクリエイティブ
我々を楽にしてくれる企業と組みたい

浅野 これから、アマナという企業におかれて、印刷という手段も効果的にお使いになる。そういう場合に、印刷会社にこうなってほしいなというイメージは、今おっしゃったようなところですか。
 進藤 そうですね。結局、お客様に対して提供する際には、われわれは効率化を図らなければいけないわけですから、お客様から見たら、任せて安心ということが大前提だと思うんですよね。コミュニケーションのためのコンテンツを作る、最終アウトプットまで仕事としてやるという場合にどういうところと組んでやるかというと、われわれを楽にしてくれるところと組みたいということですね。われわれも、お客様をいかに楽にするか、本来の仕事に専念してもらうかということですから、そういうパートナーとしての印刷会社さんは、大事にしたいですよね。それは、どういう機械を使っているとか、どういうネットワークがあるかではなくて、どういう人がやっているかということでしょうか。
 それと、われわれもデジタルの時代で、個人の時代から企業の時代になったなと思うのは、いかに専門分野のデータベースを持っているかが競争力になることですよ。例えば、われわれは年間で7千~8千件ぐらいの撮影の仕事をやるわけです。ストックフォトでいうと、グループ会社全体で、今年、40数億売るわけだから、月にすると3億7、8千万円になるでしょう。3万円だとすると、ストックフォトで1万枚ぐらい売れているのですかね。ですから、年間で12、3万枚売って、なおかつ8千件ぐらい撮影の仕事が来るということは、それをいかにデータベース化して、結局は人の情報、ビジュアルの情報、お金の情報、場所の情報というものを全部ナレッジ化することが、会社としての競争力につながっていくということです。
21世紀のクリエーティブというのは、いかに早くシミュレートというか、試しができるかということだと思っているんです。僕らの合理化の最終ゴールは、撮影の現場をなくすことなのです。
 最終的には、撮影現場をなくして、CADデータから3次元CGを作って、それをいかに写真画質にして、いかにリアルタイムでお客様の目の前で、このバックがいいのか、光はこっちからのほうがいいのか、と色々とシミュレーションしてみる。シミュレーションこそまさに21世紀型のデジタル時代のクリエーティブワークだと思っているので、印刷会社に求めるものも同じことだと思うんですね。考えていることを、いかに具体的にすぐに目に見える形にしてくれるかということですよね。それで確認をして前へ進むということが、非常に重要なことだと思っています。校正刷りの仕組みなのか、紙とのマッチングの問題なのか、そういう問題をいかに早くできるかということが重要なのではないでしょうか。
 そして最終的にはは、人々が感動してくれないと、人々が「あっ」と言ってくれないと、なかなか伝わるものが伝わらないじゃないですか。そこにわれわれは知恵を使うという文化を、印刷業界もデザイン業界も写真業界も広告代理店業界も、そこに血眼になっていくということが重要なのではないでしょうか。
 浅野 非常に数多くのストックフォトをお持ちでいらっしゃいましょう。桜井さんのシステムでも私はとても感激したのですが、検索のシステムがとても楽しいですね。
 進藤 まだまだ発展途上ですので、検索のシステムということでは、今もっといろいろと考えておりまして、新しいシステムを年内に導入する予定です。欲しいときに欲しいものを、欲しい値段で欲しい瞬間にどうやって手に入れるかということじゃないですか。それも、選ぶという楽しさがある。だけど、選ぶことを毎日やっている人は、できるだけ選びたくないと。できるだけボタン1個でやりたいですね。
 それは、まさにわれわれの業界だけではなくて、印刷業界にも同じことが言えると思います。う意味では、桜井さんの行為というのも、その一貫かなと。印刷会社の営業の方が提案し、デザイナーないしは担当者の方に写真を選んでいただく。その下準備を全部することによって、相手を楽にする。これは、一つ的を射ているのかなと思います。楽しみにしているんです。
 
■M&Aマーケット
コミュニケーションとしての映像と音楽

 進藤 印刷業界のM&Aってどうなのですか。
 浅野 最近は、徐々に出てまいりました。M&Aマーケットに、「30億の出版に強い印刷会社を買いませんか」とか、「50億の商印に強い印刷会社を買いませんか」とか、「商圏ありますよ」という売りものが出てきていますね。
 進藤 ほお、そうですか。
 浅野 結局は、印刷機械が何台あって、従業員さんが何人いらっしゃるというので、私はあまり魅力あるものとは思えないのです。
 進藤 やっぱり、M&Aは他の業界とやらないと意味ないように思います。
 浅野 そうです、おっしゃるとおりです。
 進藤 そうしていかないと、多分あまりメリットがないかもしれないですね。
 浅野 たまたまお隣に東芝EMIのTERRAというスタジオがありますが、私どものクライアントでもあるんですね。私どものワンストップで、実はパッケージソフトがなくなるという方もいらっしゃるけれど、私はゼロになるはずはないだろうと。ただ、メディア転換はあるだろうとは思いますが、ディスクの製造工場と資本提携をしたり、まさにワンストップを目指そうと思っている。ディスクと印刷物を一緒にお買い求めをいただくことを、なぜわれわれは提案してこなかったのだろうと思いますね。
 進藤 なるほどね。
 浅野 音楽の楽曲数は、ストックフォトよりも数が多いのではないでしょうか。これは検索がなかなか難しくて、今までの検索は、音楽のカテゴリーでいくか、作詞、作曲、ミュージシャン、そういう検索の仕方だと思います。
 今、私どもで実証実験を始めたのは、例えば「アマナの進藤社長さんが、朝起きられて朝食をおとりになっているときに聞きたいと思われる1曲」とか、この世界で有名な方に推薦をしていただく。そしてちょっとコメントを書いていただいて、それをサイトで皆さんに提供して、聞いてみようというと、15秒ぐらい頭出しだけ聞くことができる。全部聞きたい方は、ダウンロードしてください。あるいは、パッケージで欲しい方はアマゾンへ飛んでください。こんなビジネスモデルがコンシューマーのお役に立てるかどうかという実証実験を始めました。音楽、あるいは映像というのは、なくなりませんね。
 進藤 なくならないですね。言葉と文字に次ぐコミュニケーションのツールとしても、静止画、動画を含めて音の問題と映像の問題は、コミュニケーションの効率化という視点の中では、絶対欠くことのできない材料ですよね。それが、デジタルという流れの中で、扱いが非常にイージーになってきました。
 浅野 はい、おっしゃるとおりです。
 進藤 先ほどの「万人が印刷屋さんになった」というのと同じで、技術的にはアマチュアもプロもだんだん境がなくなってくると、プロに何が求められるのかというところが今のわれわれの置かれている状況であることは、間違いないですね。そういう意味でのマーケットというのは、とてつもなく広がっているんですよ。これは事実だと思います。
 浅野 海外とは、いかがでございますか。
 進藤 昨年、売却しましたが、90年にストックフォトのビジネスで海外に出たのです。最盛期は、ニューヨーク、トロント、サンフランシスコ、パリ、ミラノ、ハンブルグ、ロンドン、7カ所に事業展開しましたが、デジタルになってアメリカを整理してニューヨークだけにし、ヨーロッパを4カ国そのままで、世界5カ所の営業所に絞った。ストックフォト「Photonica」というブランドを展開していました。
 海外需要で売上が20億で経常利益が1億5千万ぐらい出ている会社だったのですが、これを昨年米国ゲッティ(gettyimages)に株式を売り、それで国内の第3次大改革をやりました。まず、国内で二つのビジネス、オーダーメイドとレディメイドと両方ともトップだったのですが、ここを他社が追いつけないレベルまで圧倒的なシェアを取ろうということで、オリオンとか世界文化フォトといったストックフォトの会社や、さらにオーダーメイドのほうも、カブラギスタジオとか、動画の会社にグループ入りしてもらい、グループ会社22社まで拡大したというところです。
アナログの時代につくった海外ブランドと海外販売網を売るだけではなくて、ゲッテイとは手を組んで海外販売をお願いするという形をとり、思い切ってその原資で国内の改革を最優先し、国内の販売を推進しました。今、フレームができたので、この下期、7月から来年の頭にかけて、中身を一生懸命作り変えているところです。
 浅野 海外から、競合さんがサービスを日本で始めるということはないのですか。
 進藤 ありますよ。例えば、ゲッティもコービスも、海外でナンバー1、ナンバー2というところが国内に入ってきますが、そこと手を組むわけです。市場を荒らされないようにしながら、程よいスピードで、われわれが受け入れていくということですね。
 浅野 なるほど。印刷業も、日本語という言語が障壁になっていまして、製造業としてずっととらえられていた時代ですら、海外との競争は免れてきたんですね。ところが、新たにデジタル化、より遠隔地であってもエラーの少ない受送信のシステムを開発される、より使いやすいカラーマネジメントシステムが開発される。そうなりますと、畳表や長ネギ、シイタケと一緒に、日本語用の印刷物を海外で生産することは、それほど障壁がなくなるんですね。
 今は、まだ1千億円の印刷物が輸入されています。しかも、これには書籍とか雑誌というカテゴリーは入ってなくて、マニュアルとかカタログが多いんです。通販カタログは、その一部が海外生産になっています。これが、先ほど申し上げた競争相手が変わる中で、ようやく海外のプリンターとの競争が本格化する土壌が整うんですね。そのときに私どものプリントバイヤーがどのような判断をされるかというのがとても興味深い。
 進藤 今はもう作っていませんが、われわれも、紙カタログは最盛期だと、十何種類作っていたんですね。当然、最後のあたりは、国内じゃなくて海外で、それは韓国とか香港などで印刷していました。
 海外で印刷してみて初めて分かるのですが、同じ地域のライフスタイルを持っている人たちでないと、色味の違いなど、最終的なアウトプットの段階で違和感が出てきますね。情報としての印刷物という情報にかなり偏っているものは、彼らに取って代わられる可能性というのは十分にあるんじゃないかと思いますが、付加価値の高い印刷物というのは、そんなに心配しなくてもいいんじゃないかと思います。
 浅野 情報のセキュリティーの問題もありますでしょう。印刷物を製造する過程に安心・安全などという概念が求められるとは考えてもみませんでしたが、考えてみれば、両方ともコンテンツを乗せて動くビークルだから、JRさん、JALさんと一緒に安心・安全が求められてもちっとも不思議じゃないなと、自然に思えるようになりましたね。
 そういったことも、新たなプロフェッショナルが備えなければいけない条件です。ですから、ある専門性は下がっても、また、あるものの専門性が高まってくる。それは、大変ありがたいことなんだと気づきました。
 今日は、お忙しいところ、本当に貴重な時間をありがとうございました。これからも、まさに競合、共存……、どちらのケースも考えられますが、両立ということもあるかと思います。いろいろな意味でのお付き合いができましたらと願っております。ありがとうございました。
 進藤 ありがとうございました。


キーワード
カテゴリ
同じカテゴリの最新ニュース
その他の最新ニュース記事
2010年07月31日 メーカー動向
モリサワ・年間契約でのソフト提供を開始

モリサワ(森澤彰彦社長)は8月9日より、同社ソフトウエアの提供方法について従来の販売形式での提供に加え、新たに「年間契約」形式での提供を開始する。 同時に、販売製品を対象とした新たな「保守契約」も開始し、ユーザーが安心して継続的に同社ソフトウエアを使用でき...

2010年07月29日 イベント情報 団体動向
クラウドマネージメント協会・全国大会を8月10日に開催へ

現在、年々業界規模が縮小をし続ける印刷業界にあって、2010年は1つの象徴的なターニングポイントになると予想されている。 Kindleやipadに代表される電子書籍端末の旺盛な需要を背景に印刷物重要が今後激減する危険性をはらんでいる中で、全国の印刷業を中心...

2010年07月29日 メーカー動向 人事・訃報・移転
エイブリィ・デニソン社 役員人事

粘着材料やラベル製品を提供するエイブリィ・デニソン社(本社:米国カリフォルニア州パサデナ、代表取締役社長兼最高経営責任者:ディーン・スカボロ氏)はこのほど、ロールマテリアル部門におけるアジア太平洋地区のバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーにジョージ・...

今月の必読
2009年4月9日
プリンターで手軽にシュリンクラベル/オリジナルのペットボトルも

有限会社ピクア(東京都、末松一郎社長)は、特別な機械を一切使わずに 容器包装用のシュリンクラベルが制作できるフィルム材料「お手軽・シュリンクラベル」を4月10日、発売する。

>ニュース全文を読む

2010年2月9日
大日本印刷 セルフ型フォトブック作製機の本格展開を開始

大日本印刷(=DNP、北島義俊社長)の100%子会社で、写真関連製品を販売するDNPフォトルシオ(島田幸利社長)は、生活者がその場で簡単にフォトブックが作製できる国内初のセルフ型プリントシステム『PrintRush PhotoBook(プリントラッシュ フォトブック)』の展開を2月中旬より本格的に開始する。

>ニュース全文を読む

2010年2月15日
凸版印刷 ITソリューション事業拡大に向け新会社を設立

凸版印刷(東京都千代田区、足立直機社長)は、ITソリューション事業の拡大を目指し、凸版印刷のIT関連部門および、トッパン・マルチソフト(=TMS、東京都台東区、加藤孝雄社長)、トッパン・エヌエスダブリュ(=トッパンNSW、東京都文京区、道用雅浩社長)を統合し、トッパンシステムソリューションズ(=新会社)として4月1日よりスタートする。

>ニュース全文を読む

2010年2月4日
コニカミノルタグラフィックイメージング・モリサワ共催 「"伝える"ためのユニバーサルデザイン」セミナーを3月11日開催

コニカミノルタグラフィックイメージング・モリサワ共催の「"伝える"ためのユニバーサルデザイン」セミナーを3月11日に千代田区・総評会館で開催する。当日はNPO法人メディア・ユニバーサル・デザイン協会を特別講師に招き、より多くの人たちに情報を正確に「伝える」には"何に"気をつけるべきか、事例を交えて紹介する。

>ニュース全文を読む

株式会社沖データ
コダック株式会社
写真素材の詰めホ~ダイ
ダイナコムウェア
キーワード