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オフセットインキのノンVOC化・その過去・現在そして未来
東洋インキ製造㈱ 印刷・情報事業本部 インキ技術部に聞く
アロマフリー溶剤と大豆油で基礎築く
植物油の採用で循環型資源にシフトアップ
印刷環境でのVOC対策では、オフセットインキの対応はかなり早い時期から着手されている。VOC(揮発性有機化合物)が発生するのは、インキに含有される高沸点石油系溶剤が原因である。アロマフリー溶剤から植物油への切り替えが、ノンVOCインキの製品化に関わる開発史と言える。
環境対応型インキ開発の現場から東洋インキ製造(株)の印刷・情報事業本部インキ技術部に、ノンVOCインキ開発の道程と今後課題を整理してもらった。
植物油の開発と組成ノウハウで競争
■オフセットインキとVOCの関係を、インキ組成物質から整理したいのですが。
組成から言いますと、顔料、樹脂、油分が主で、それに補助剤が少々含まれます。一番大きな比率を占めるのが樹脂と油分からなるワニスで、インキの8割9割の性能を決めるものになります。これは、インキの顔料や補助剤などが入っていない粘性を帯びているものです。この油分中に石油系の溶剤等が使われており、VOC発生の元になるわけです。これに乾燥性と被膜を補うために、植物油を使っています。
溶剤には高沸点の石油系溶剤や高級アルコールなどの鉱物油が使われていますが、揮発性有機化合物としてまとめられます。これがVOC値を決める素材になります。揮発しやすい溶剤を何とかしないとVOCが発生してしまうというのが問題提起の大きなポイントです。
さらに、法を順守している日印産連やGPNレベル1、2で規定されている量は全部1%未満ですが、これを満たしていなければならないのです。そのためには、石油系溶剤を植物油に替えていかなければならないのですが、単純に置き換えただけですと、セット・乾燥等のバランスが崩れてきますので、ここを開発段階でどのようにバランスをとっていくのかというのが、VOCとインキの問題を考える上で大きなポイントです。
インキ中溶剤は紙の繊維に毛細管現象によって浸透していくのですが、この浸透を進めるのが溶剤です。この働きを各種の植物油で代替をしていくわけですが、レベルを落とさず維持しないと印刷適正を損なうことになります。
それを変性し溶剤に近いものにし、かつ有機揮発性成分を出さないようなものにしないといけません。
AF化で作業環境の改善目指す
■「AF溶剤」について説明していただけますか。
AF溶剤というのは、アロマフリー溶剤の意味で、過去の溶剤に使われていたアロマティック(芳香族炭化水素)が非常に少ない用材です。過去の溶剤はパラフィン(脂肪族飽和炭化水素)約51,0%、ナフテン(乾式飽和炭化水素)約32,9%、アロマティック約16,1%で構成されていますが、AF溶剤ではパラフィン約23,0%、ナフテン約76,8%、アロマティック約0,2%の比率になっています。
この芳香族炭化水素は、臭気があって、皮膚刺激性も強い。これをAF溶剤にすることで①低臭気・低皮膚刺激性などで作業環境を改善し、②大気汚染が少なく生分解性(溶剤のみ)がありで地球環境やエコロジーへの対応を可能にしようとするものです。
■現在はどのメーカーさんもAF溶剤を使用している。
AF溶剤を使用しなければ「エコマーク」が取れません。
■この組み合わせが、企業秘密にあたるのですか。
いえ、これはアロマフリー溶剤なので、また別です。アロマフリー溶剤を使っていても、VOCは発生する。NV(ノンVOC)ではありません。AFを使っている以上はNVにはならない。AF溶剤がVOCを発生してしまうので、逆に言うと、AF溶剤を植物油に置き換える所作が必要です。
2000年からノンVOCを製品化
■インキ成分の30~40%を占める樹脂には、VOCを発生させる要素はないのですか。
ありません。先ほど言ったワニスの中に、樹脂、溶剤というのは入っています。樹脂そのものですと硬い固まりなのです。これに熱をかけて、溶剤、植物油などと一緒に混ぜると、ワニスというものになります。これに顔料を加えてインキを造る。このインキの構成そのものは、昔から全然変わらないわけです。
■努力してきたのは、アロマティックをいかに減らすかということ。
最終的には、これだとNVの定義を含めシックハウスやアレルギーなどに対応できません。AF溶剤はVOC(有機揮発成分)を発生してしまうものなので、NVにはなりません。NVにするには、植物油などに置き換えていかなければならない。
■ノンVOCインキから、今までとは全然違うインキになるということですね。
これまでの油性インキでは、溶剤タイプでも植物油がある程度入っています。1998年から、SOYシールを取ろうと思うと、枚葉の油性インキの場合は、大豆油が20%以上入っていなければいけません。
NVインキになると、弊社では大豆油かつNVにしております。現実に2000年からノンVOCインキは製品化されていますが、桐油、亜麻仁油、大豆油などの組み合わせで100%植物油に変えています。さらに、大豆油が20%以上入っているということになります。
■AF溶剤になる前は植物油は使われていなかった。
いえ、植物油の皮膜がインキの皮膜に相当するものですから、ゼロではありません。割合の問題です。また、溶剤もAFではありません。
■インキ面での環境対応がクローズアップしたのはいつ頃からですか。
一番最初は1992年の環境サミット(国連環境開発会議 通称:地球サミット)が開かれた年で、大豆油インキが開発されています。こうした社会的背景をバックに、95年にアロマフリー(AFインキ)、98年にAF大豆油インキ、99年にAF再生植物油インキなどが誕生してきています。
例えば枚葉大豆油インキの大豆油量の数値はどこで決められるのですか。これは、アメリカ大豆油協会にてきめられております。
■現在はノンVOCインキが出来上がっている。では、業界企業はそれを使っていくかということなのですが。
一つは、クライアント様の考え方にもよります。先ほどのシックハウスや、アレルギー等に対してNVを使っていこうという動きが出てきています。現在制定されている規制をクリアしていることおよび、シックハウス等を考慮したインキとしては、NVインキしかありませんということを、インキメーカーの立場からアピールしている状況です。
■価格的な問題もあるのではないですか。
植物油原料は石油系溶剤に比べると高価であるため、価格的にはやはり高いものになります。また、NVインキの生産工程では溶剤等を使うことはできず、ライン等を洗浄するにも溶剤が使えません。溶剤が残留してしまうからです。
■高価にはなるがNVインキを使おうとする印刷企業はどのような企業ですか。
全ラインでNVインキを使おうとする企業はまだおおくはないです。品物によって変えているのが現状でしょう。ただし、インキはNVですがその周りの環境はNVにはなっていない。インキは確かにNVになりましたが、ほかの工程は、結局、まだ溶剤を使って拭いていたりする。
ノンVOCのメリットとデメリット
■その意味では、東洋インキさんは、湿し水や洗い油などのNV化をどのように進めようとしているのですか。
富士フイルムグラフィックシステムズ㈱様などがNV洗浄剤や、NVを使った湿し水を出されていますので協力し合って進めています。
■そうした課題はあるにしても,NVインキがもたらすメリットは大きなものがある。
最大のメリットはエコマークVer2.1、SOYシール認定,NonVOCなどの現在制定されているインキに関する基準を全てクリアできるのは、NVインキしかないということです。石油系のものは枯渇してしまいますので、それを循環型の資源にシフトアップすることができる。植物油であれば、気候の影響は受けるでしょうが、絶えず作っていけるものです。
もう一つは、紙上乾燥性が早く、印刷適正面でもドライダウンが少ないものになっています。完全乾燥後の被膜強度も強く、擦れ耐性だけでなく人間の皮脂による色落ちにも強い。また揮発成分が無いため印刷機上での安定性(インキの締まり、タックアップ)がよいなどの点を上げることができます。
■逆にデメリットになってくる点もある。
セット性はAF溶剤に比べて、遅い傾向です。粘度が違うので、毛細管現象による浸透度が遅くなります。また、重合ガスによるグロスゴーストという現象が出る場合があることです。ただし、溶剤浸透によるグロスゴーストの問題は逆に少なくなります。
そして、AFインキに比べて植物油が残りやすいので、印刷物を高温・多湿の条件化で保管するとブロッキングを生じやすくなります。
価格面においては、原材料単価が高くなるためインキ価格に影響しおります。
■作業性とか、印刷物への影響度を考えると、AF大豆油インキが当分主流になるのでしょうか。
当分はAF大豆油インキが主流になるものと考えております。
作業条件を印刷会社様で考慮(高温多湿の条件下に印刷物を保管しない等)していただけるのであれば、NVインキは環境面において有効だと思います。
■今は、環境対応の方向があっても、印刷会社は価格の問題や作業性の問題から、どうしてもそうでなきゃならない仕事に限って使っていると。また、湿し水から洗い油から全てを揃えないと、溶剤が残留として残るので、NVインキを使っても意味がないということですね。
そうであるものと考えます。印刷工程での環境対応としては、インキの取り組みは早いほうだったと思います。NVインキの開発はクライアント様の要求も高いわけです。また、E3PA(環境保護印刷推進協議会、クリオネマーク)等においては印刷物作成工程から環境保護を考慮しています。従って、インキ単独での問題としてではなく印刷関連資材すべての問題として協力していかなければならないと思います。
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